Ni studu Esperanton!

高校の時に興味があって、エスペラント語を勉強したことがある。

エスペラントとは、ポーランドの眼科医ザメンホフが作り出した各言語をミックスした混成言語で、普及はしなかったが、今でも100万人くらいのエスペランティストがおり、コミュニケーションに使われている。

ザメンホフは、文化の衝突(戦争)は、異言語により、意思疎通が上手くいかないことが原因と考え、ラテン語、英語、フランス語、イタリア語などの様々な言語の要素を抽出し、人工的な言語を作り出した。

一方、異なる人種、言語、文化がミックスする地域においては、通商を目的として言語が「自然発生」することが知られている。様々な人種や文化がカオスのように混在する地域では、ビジネスをするために、必要に迫られて混成言語が発生するのだ。この過程はとても興味深い。

アジアでは、一部の通商地域にピジン言語(Pidgin Language)が普及し、貿易などで使用されている。ピジンはビジネスという言葉が中国語的に読まれ、変化したものであるが、交易が目的なので、単語も文法も独自に進化し、ビジネスの重要なポイントのみ伝わるよう簡略化されている。方言というレベルを超えて、全く新たな言語圏を形成している。

ピジンに特徴的なのは、何でもbelong to〜で表現するところである。My Name is Tommy. がピジン語だと、Nem bilong mi Tommy. (ネーム ビロング ミー トミー)になる。まるで、映画「ブレードランナー」の中で飛び交う言語のようだ。

このような混成言語を総称して、Creole(クレオール)、または、Lingua Franca(リンガフランカ)とも言い、様々な地域で派生し、使われている。

人類には、共通文化があることが知られており、文化人類学では、ユニバーサルカルチャーと呼ばれる。例えば、どの未開の地に行っても「あやとり」で遊ばれているし、女が男を選別する時は身長が最も重視される、などの事象である。(これは、あらゆるサンプルで実証されている)

Lingua Francaもこのユニバーサルカルチャーの一つではないかと考えている。つまり、自然界では、「異質なものから共通したフォーマットを作り出す」という作用が働くのではないか。それは、政治、経済、アート、音楽などの人間の営みだけでなく、自然界の凡ゆる事象で確認することができる。

エスペラントが普及しなかったのは、ここに原因がある。言語はコミュニケーションの必要に迫られて、自然発生するものなのだ。原始社会のコミュニケーションも、きっとLingua Francaのように発生し、発展していったに違いない。

しかし、今、改めて、エスペラント語を習得するべきと考えている。エスペラント創生時のように、世界は混沌の中にあり、通商目的で自然発生した混成言語では解決できないような文化の衝突が発生している。

今の時代にこそ、エスペラントのような超地球的言語の存在が必要に迫られている。ザメンホフの平和への願いが100年の時を越え、地球上のあらゆる文化の衝突を解決するのかもしれない。

Ni studu Esperanton!


TOMOYUKI TAKANO

大学では数学、大学院では経営学を学ぶ。都内のメディア企業勤務。作曲家、ピアニストとしても活動中。興味の対象は、現代音楽、現代詩、美学、民俗学、史学、社会学、宗教学、数学、AI、データサイエンスなどなど。アンダーグラウンドからカッティングエッジ、過去から未来まで全て見たい。

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